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【WORD】2015年親子で巡った母

更新日:2018年7月18日

芸術祭をめぐることば4



 

佐藤:元々はご自身はこの地域の出身なんですか?


はい。生まれは十日町なんですが、私も絵を描くのが好きだったんで、都内のイラストレーターの専門学校へ行って、それで雑誌の編集の会社に勤めて、で、ああいう細かい仕事が苦手だってことがわかって、実家に戻ってきて仕事を継いだっていう感じですね。 都内にいた時は、こっちに戻る気持ちは無かったし、私は創作するのが好きだったんで、それでそのまま行けたらいいなと思ってたんですけど、そんな甘いもんじゃないなって思って帰ってきて、それが20代前半ですね。で、ここで働いて20年くらいになります。


佐藤:じゃあ、ここで仕事をし始めて、ちょっとしたら芸術祭が始まった形ですか?


そうですね。ちょうど始まりましたね。始まりは、もうとにかく地域の皆さんが不審がってたんで、特にあのそんなに・・何て言うのかな、受け入れるような形じゃなかった・・特にこの地域はそうだったんですけど、あの、私ジェームズ・タレルの「光の館」のスタッフの人と仲良くなって、その時に松代の方の芸術を見させてもらったんだけど、あちらはものすごくこう、芸術を取り込んで、一生懸命やろうっていう雰囲気があったのに、地域によって温度差が非常にあるなっていうのが、初期の段階の感じでしたね。


佐藤:それが2000年(第1回開催年)ぐらい。


そうですね。1回目(2000年)、2回目(2003年)ぐらいの間での、私の中の理解ですけど・・・で、その後は、やっぱり慣れてきたみたいな感じで、皆さんどんどん、じゃあ、それなら俺達もなんかやらないか、みたいな形でやり始めて・・で、多分その後ぐらいからだったと思うんですけど・・・・


佐藤:じゃあ、まずはこう山の方が徐々に盛り上がってきて・・・


そっちは、観光でずっとやってきたから、きっとね、これを機に観光をもっと盛り上げたいっていう思いもあったんで、松代、松之山は、どんどんこう、頑張ろうっていうことだったんだと思うんですけども・・・


***


佐藤:2015年(第6回開催年)は、親子でかなり回られたとお聞きしましたが。


回りましたよ。川西は全部見たし、十日町もほとんど見たし、ちょっと津南の方が見れなかったぐらいで、他はもうほぼ見ました。娘のために、とにかく連れてってあげたいと。小学生になったし。理解できるところまでみんな見せてあげたいっていう。


佐藤:実際どうでした?回ってみて?


とりあえずあれですよね、ハンコを押すのがもう一番楽しくて・・・っていうことだったんで、それでもいいなと思ったんですけど、そんな中で、この間また話したら、子供もやっぱり記憶してるんで、そうか、記憶に残ってて良かったなと。私子供が3人いて、当時は、2年生と、年長さんと年少さんかな?あと、その子の友達と一緒に回ってあげたりとか、あと私の妹が近くに住んでるんで、そのうちの子供連れてとかしながら、主に彼女に見せるために、せっかく車もガソリンかけて行くなら、ちょっと多めに子供乗せてくぐらいの考え方で(笑)。


佐藤:ツアーバスみたいですね(笑)。どういう感じなんですかね。彼女たちの反応っていうのは?


私、今回それで書き出してみたんですよ。自分でもよかったなと思ったのをば~っと。で、何か良かったんだろうって思ったら、やっぱりあの体感できたりとか、体験できたりするものに、子供達が喜ぶぞっていうのは思いましたね。反対に大人の私としての良かったってものは、例えば、「うぶすなの家」とか、やっぱりこう作品に行くまでに時間がかかるのが良かったかなと。こんなところがこの地域にあるんだ、みたいなのが知れて良かったって言うのと、あと、あれですよね、もう大人的で申し訳ないですけど、色々なものが一箇所にあって、色々体験できてっていうのが、「お得感」が良かったっていうところですかね。子供達はどっちかっていうと、体感、体験、あと大規模な仕掛け「ヤマノウチ」みたいな・・・ことに関して非常に喜んでたっていう風に思いましたね。あとは私、芸術の中から逆に眺める風景っていうのは、すごくよかったなぁって。この2つ(「最後に継ぐ家」 「脱皮する家」)は私は良かったと思っているもので、「脱皮する家」はすごく良かったんで、私お花を習ってるんですが、その先生も連れてって、「いいわね。」って言って・・・体感っていうのは、共有ができるっていうことに、非常にいいなって思いましたね。


佐藤:一緒に回ると、大人と子供の感じ方の違いもより実感できるんでしょうね。


子供は、1個それが楽しければ、今日は1日楽しかったっていうんだけど、大人の私としては、同じガソリンかけるなら、いっぱい見れた方がお得感があって良かったって思うって言う差はあるのでね・・私が、もしその親子マップとかをつくるなら、子供が行って鉄板の芸術、なおかつ大人がそこで色々楽しめるっていうところですよね・・・ があればいいかなあと思いますけど・・


佐藤:それだとやっぱり農舞台とか、ナカゴグリーンパークとか・・・


そうですよね。そこは本当にそれを考えられていると言うか、よくできてるなと思ったのと、あと2015年の十日町の市街地のやつ(十日町市街地プロジェクト)は、また、今年もあるかわからなかったんだけど、職場の人が、せめて一回でいいから芸術祭を体験させたいんだけど、どこがいい?と言われた時に、私は最初にもう市街地のキナーレからの、コインランドリー行って、「いこて」までのって説明して、で、もしよかったら諏訪神社の上登れば、すごくいいよ、みたいな話をしたんですよね。市街地のは良かったですね。「チョマノモリ」もよかったですよ。子供たちが楽しんで、 大きいものってやっぱりそれだけで、「おぉっ」てなるって言うかね。


佐藤:逆に「光の館」とかも、このぐらいの年齢の子達ってどういう反応するんですかね?


「光の館」は中に入っただけなんで分かんないんですけど、でも、体感がないと子供達って・・・なんだろほら、要するに押したボタンでなんかバン!っていうものがないと、それを芸術なんだとか、それを見たっていう感覚に残らないみたいなんで・・・結果、だから一番良かったのはって言ったら、子供らは「最後の教室」だって。もう入った瞬間にドンドン!ドンドン!みたいなのがあって、結局、「どれだけ刺激されたか」なのかなって思いましたね。え~「ヤマノウチ」とかじゃないんだ・・みたいな。あれ綺麗だったよねって言ったんだったけど、あ~うん、山登ったねみたいな程度・・


佐藤:「最後の教室」は、「考える芸術」的な側面が強い印象もあるので、大人になってまたもう一度見てみると、また全然違うことを感じるかもしれませんね。


哲学的なんですかね。だから、刺激の仕方がちょっと奥深くに入るって言うか、そういうことなんでしょうね。それは、子供はそのまんま受け取るっていうか・・・


佐藤:「最後の教室」が子供さんに好感触なのは意外でしたね。ちょっと、お化け屋敷的な感覚なんでしょうか。


そうそう。同じくほら、お化け屋敷みたいなのが、同じ時期やってたんですよ。下条で・・「物怪観光妻有之荘(もののけかんこうつまりのしょう)」。こっちじゃないんですよ。こっちじゃなかったのに、「最後の教室」はみんなで「お化け屋敷」って言ってるんですよ。こっちのお化け屋敷も行ったじゃないかって思うんだけど・・・


佐藤:先ほど、「時間をかけて行く場所が良かった」とお話がありましたが、行くまでに時間がかかるっていうのは、その時間をかけることで、作品に向き合う心の準備が良い形にできるんでしょうね。僕も、家から新潟まで新幹線で来るのと、車で5時間かけて来るのでは、その感覚の整い方が違う感じがします。


下条の「もぐらの館」ってあったじゃないですか。私、色がカラフルなものが好きなんで、はっきり言ってこれ好きじゃない・・だけど、ここは良かったって言うか、私が好きなものじゃないんですけども、よかったっていう感覚になれるのは、結局そこまでの遠い道程っていうのが、原因だったのかなと今のお話を聞いて・・・「うぶすな」も、どっちかっていうとそれほどじゃなかったんですけど、でも、この2つに関しては、そんなじゃないんだけど、嫌いじゃないって言うか・・「良い」っていうほうに、自分が分類してたの驚いたんですけど・・・やっぱこの行くまでの距離っていうのが・・・


佐藤:そうですよね。逆に身近なものほど、素直に捉えるのは難しいのかもしれませんね。


だから、自分の住んでいる場所と近い芸術の方が、何かあんまり良いって思えないから・・こうやって書き出しながら結構気が付いて(笑)・・・そこなんですよね。地域に住んでいるからこそ、作品の裏側が見えて来たり、いろんな事情を知ってしまってたりっていうか・・


佐藤:ちょっと、そういう現実の部分と、あえて切り離して見る意識も大切かもしれませんね。


もう一つは、今話し聞いてて思ったんですけど、自分が住んでいる地域の作品を、要するにじゃあいかに作品のみとして、見れるかっていうのはちょっと私は知りたいなと思いましたね。だから次回は、自分なり作品として向き合える時間・・じゃあどういう時なんだ、仕事してない時に行った方がいいのか、仕事して行っても大丈夫なのかとか、いつの時間に行ったら良いのか、人がいない方がいいのか、いる方がいいのか・・・ そういう風なやり方ができたらいいですね。


佐藤:そうですね。作品との間合いの取り方をどうするかっていうところですよね。体調とか、環境とか、生活とかで変わってくると思うので・・


自分が地域に住んでるからこそ、そういうのってできることじゃないですか。


佐藤:そうですよね。いろんな表情が見れるっていうのは。作品を作った人よりも地域の人の方が、作品のこと知ってるっていうのは、結構あったりするんじゃないかと思います。今年は一番上の娘さんが5年生ですよね。3年経って彼女がどう感じるのかも気になります。


2年生の時に、「じゃあ次は5年生になった時にあるんだね」って、非常に楽しみにしてたことを、思い出します(笑)。


2015年親子で巡った母おすすめMAP1→


2015年親子で巡った母おすすめMAP2→

 

2018年4月4日 十日町市内某所にて


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